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ノブさんと他愛も無い話をしてビールを飲んでいた。
今日に限って、カウンターにはわたし一人きり。
帰るタイミングも掴めずに、いつまでもダラダラと飲み続けていた。
空き腹でアルコールを飲んだ所為か、いつもより酔いが回るのが早かったかもしれない。
気が付けば、ふわふわといい気分になっていた。
「今日は、よく飲むね」
「なんとなく、飲みたい気分だから」
フフフと笑えば、ノブさんがわたしに付き合ってロックグラスを傾ける。
「ノブさん、まだ早い時間なのに、飲んでも大丈夫なの?」
「うーん。今日はヒマみたいだからね」
ノブさんは、そう言って魅惑的な笑みを見せた。
「……その笑顔、反則」
「え、どうして?」
「またまた、わかってるくせに」
ノブさんの真顔が可笑しくて、クスクスと笑う。
あぁ、楽しい。
だからせめて。今だけは、何もかも忘れたい。
その思いから、バッグに入れたままの携帯がバイブで着信を知らせても、手に取ることもしなかった。
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