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「課長、稟議書に承認印お願いします」
「はいはい」
引き出しを開けると、内容を確認もせず印鑑をわたしに渡す森田課長。
いつものことなんだけど、このいい加減なところ、どうにかならないんだろうか。
「チェックしないんですか?」
「大丈夫。吉川さんのこと信頼してるから」
……それは、どうも。と言いたいところだけど、本当は面倒臭いだけなんでしょ?
そう突っ込みたいところを我慢して、黙って印鑑を押す。
「あ、そう言えば、さっきメール転送したから確認して。それでさ、見積書なんだけど、今日先方に発送して欲しいんだよね」
「はい。わかりました」
と言ってみたものの、メールを開くとそれは図面だけで。
まさか、これから品番を抜き出して見積書を作成し、今日中に発送しろっていうの?
しかも、メールの日付は一週間前。今日まで忘れてたってことだよね?
ムッとして森田課長の姿を探すと、見計らったように外出した後だった。
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