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「なに?ジロジロ見て」
「あ、いえ。相変わらず、男前だなと思って」
「あはは。美咲ちゃんにそう言われると嬉しいな」
クスクスと笑うと急に雰囲気が変わる。
その表情に、妙な色気に感じてしまう。
「今も例の女子大生と付き合っているんですか?」
「……それ、いつの話?」
「え、もう別れたんですか?」
そう言うと、ノブさんが軽くわたしを睨んだ。
「ごめんなさい」
「別に、いいけど。いつものことだしね」
ノブさんは、コルクのコースターの上に生ビールをそっと置くと「何かあったら、呼んでね」と言って奥へと引っ込んでいった。
カウンターにだけ、照明を点けてくれたノブさん。
厨房からその横顔だけが見える。
ぼんやりしていると、バイトの子が数人入ってきて、直ぐに賑やかな雰囲気になった。
ここに最後に来たのは、いつだろう。
確かその時は、敦士と一緒だったはず。
随分と昔のような気もするけれど、実際には半年も経っていないのだ。
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