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あっと言う間に詰め寄ったユウに、後ろから抱きすくめられて、わたしは身動きが出来なくなってしまった。
「言いたいことがあるなら、はっきり言えば?」
「…………」
ユウの声は優しかった。
わたしの我侭も身勝手な言動も、すべて受け止めてくれそうな安心感がそこにあった。
それなのに、わたしはどうして動揺してしまったのだろう。
一度、彼女と鉢合わせをしたことで、ユウと彼女の関係を現実的なものとして見てしまって。
あの時の辛かった気持ちを思い出したから。
でも。今、ユウは、わたしを抱きしめてくれている。
きっと、この温かなユウの腕は、今日も明日も、わたしを抱きしめてくれるだろう。
そう思うと、身体から余計な力が抜けていくようだった。
「昨夜、歓送迎会だったの」
「ああ、知ってるよ」
「一次会の後、川原さんとコーヒーを飲みに行って」
「うん」
「それでね……」
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