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川原さんとのやり取りを簡単に説明すると、ユウはわたしの背後で小さな溜め息を吐いた。
「美咲、それは」
「わかってる。川原さんが見たのは、あの人のことでしょ?」
「……ああ」
ユウは困っているのか、それっきり黙ってしまった。
それが、なんだか口惜しくて。
意地悪をしたいわけじゃないけれど、「昨夜、少し寂しかったから」とユウの手の甲を軽く抓った。
するとユウは、ホッとしたのか小さく笑って
「昨夜、電話に出れなくて悪かった」とわたしの頬にキスをした。
「ユウ、今日は泊まっていって?」
「言われなくても、そのつもりだったよ」
お互いを信じていれば、何があっても乗り越えていけると思っていた。
なんでもない毎日が、少しずつ積み重なって、大切な思い出に変わっていく。
そして、その先には……。
わたしがユウとの未来を意識し始めた頃、その人はわたしの前に現れたのだ。
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