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  何も言えずに立ち竦むわたしの横をマンションの住人が訝しそうな表情で通り過ぎる。 そこで漸く、買い物袋から食材が飛び出していることに気がついた。 ……拾わなきゃ。 今日は、ユウと炊き込みご飯を作る約束をしているのだ。 楽しみだと嬉しそうに言ってくれたのは、つい一時間前のこと。 「あの、」 「もうすぐ、帰ってくると思います」 食材を拾いながら、ピシャリと答えると、彼女は困ったように目を伏せた。 「部屋で待たせてもらえませんか?」 確かに、このまま立ち止まっているといると、通行の邪魔になる。 喫茶店に場所を移動することも考えたけれど、わたしの手には買い物袋が。 そして、彼女も大きなバッグを抱えていた。 「……どうぞ」
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