304人が本棚に入れています
本棚に追加
/29ページ
「次は、吉川さんですね」
耳元で囁く川原さんに「ちょっと!」と慌てて口止めをする。
わたしとユウが付き合っていることは、川原さんしか知らない。
余計な詮索をされるのがイヤで、秘密にしようとユウと約束をしていた。
その約束をユウはずっと守ってくれている。
「本当は、システムが移行して落ち着くまで働きたかったんですけど……」
申し訳無さそうに眉を下げる川原さんに、安心させるように笑って見せた。
「引継ぎ書も作ってもらったし、三田さんも覚えが早いし、大丈夫だと思うから、こちらのことは気にしないで」
「わたし、吉川さんと働けて嬉しかったですぅ」
「やだ、ちょっと泣かないで!」
そんなことを言われたら、わたしまで涙腺が緩んでしまう。
「だって、吉川さぁん」
「それ以上、言わないでっ」
慌ててハンカチを取り出して、川原さんに握らせた。
最初のコメントを投稿しよう!