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彼女は視線を落として、大きなお腹に手を置いた。
お腹の赤ちゃんを愛しむその仕草は、わたしをどうしようもなく不安にさせる。
その赤ちゃんの父親は誰なの?
どうして、ユウに会いにくるの?
考えれば考えるほど、その結論はユウへと結びついてしまう。
と、その時、乱暴に玄関のドアが開いた。
ドタバタと靴を脱ぎ捨て部屋に飛び込んできたユウは、彼女を見るなり、驚いたように大きく目を見開いた。
言葉もなく呆然と突っ立っているユウを彼女は強い瞳で見詰め返す。
その表情からは、一切の迷いが消えていた。
「突然ごめんなさい。でも、ユウがわたしの電話に出てくれないから、こうするしかなかったの」
「……っ」
こうするしかなかったとは、どういうことなの?
ユウはこの事実を知っていたの?
震える指でユウの手を握ると、ユウはハッとしたようにわたしを見た。
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