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わたしだって、言いたことがある。
でも、結局わたしは何も言えずに、給湯室を出て行くユウの背中を見送った。
それから、しばらくして、人事が発表された。
根回しをしていると言っていたユウ。
だから、てっきり本社に異動になると思っていたけれど。
ユウの移動先は、閉鎖の噂が絶えない地方の営業所だった。
「吉川さん、田所さんの送別会は出席でいいですか?」
「えっと……」
出席確認のメモをヒラヒラさせながら、ユウのアシスタントをしていた女子社員が面倒くさそうにわたしの前に立っている。
お局さまに幹事を押し付けられたのが、余程気に入らなかったのだろう。
不機嫌を絵に描いたような表情をしている。
「いつだっけ?」
「来週の金曜日です」
「そんな急に?」
「その日しか無理だって、田所さんが言うんですよ」
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