16

12/22
前へ
/22ページ
次へ
   「遅れてすみません」 送別会の居酒屋に一時間遅れて到着すると、森田課長がわたしに向かって「こっちこっち」と手招きをして呼び寄せる。 トラブル対応で、遅れてしまったわたしの席を確保していたらしい。 急いで靴を脱ぎ、お座敷に上がった。 みんなそこそこ出来上がっていて、あちらこちらから爆笑が起きていた。 でも、一歩足を進めたところで、立ち止まってしまう。 森田課長が確保していた席は、ユウと同じテーブルだったからだ。 「どうした?」 「いえ、……なんでもないです」 「遅くまでご苦労さん、取りあえずビールでいいかな?これ冷えてるから」 「あ、はい」 森田課長にビールを注いでもらいながら、チラリとユウを見る。 目が合うと、ユウは優しく微笑んだ。 「来てくれて、ありがとう」 「…………」 無言でビールをゴクゴクと喉に流し込む。 今日は酔っ払うわけにはいかないのに。 気がつけば、一気飲みをしていた。
/22ページ

最初のコメントを投稿しよう!

300人が本棚に入れています
本棚に追加