300人が本棚に入れています
本棚に追加
「遅れてすみません」
送別会の居酒屋に一時間遅れて到着すると、森田課長がわたしに向かって「こっちこっち」と手招きをして呼び寄せる。
トラブル対応で、遅れてしまったわたしの席を確保していたらしい。
急いで靴を脱ぎ、お座敷に上がった。
みんなそこそこ出来上がっていて、あちらこちらから爆笑が起きていた。
でも、一歩足を進めたところで、立ち止まってしまう。
森田課長が確保していた席は、ユウと同じテーブルだったからだ。
「どうした?」
「いえ、……なんでもないです」
「遅くまでご苦労さん、取りあえずビールでいいかな?これ冷えてるから」
「あ、はい」
森田課長にビールを注いでもらいながら、チラリとユウを見る。
目が合うと、ユウは優しく微笑んだ。
「来てくれて、ありがとう」
「…………」
無言でビールをゴクゴクと喉に流し込む。
今日は酔っ払うわけにはいかないのに。
気がつけば、一気飲みをしていた。
最初のコメントを投稿しよう!