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  お開きなるまで、あと三十分ぐらいか。 時計を見ながら溜め息を吐く。 わたしの席には、きっとさっきの営業が座って部長と話をしているだろう。 そう思うと席に戻る気にもならず、自販機の前のベンチに腰掛けて、ぼんやりしていた。 ユウが居なくなるなんて、まだ実感が湧かない。 ユウとはいろいろ有り過ぎて、その存在はわたしの中に深く刻み込まれているような気がする。 そのユウの顔を見るのは今日が最後になるなんて。 なんというか。 ホッとしたような寂しいような複雑な気持ちになる。 「今日が、最後……」 しみじみと呟くと、思いがけず聞き覚えがある声が降ってきた。 「なにが最後だって?」
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