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長い指先で、軽く叩いて灰を落とす。
つい反射的に反対側の指を見てしまう。
わたしに気を遣っているのか、それとも、そういった類のものが苦手なのか。
ユウの左手の薬指に指輪はない。
「主役なんだから、そろそろ席に戻ったら?」
「みんな好き勝手に飲んでるよ」
「……そうだね」
フフフと小さく笑って、黙り込む。
沈黙は時間を止めてしまうのか、一秒がとても長く感じる。
溜め息混じりに息を吐いた。
ジワリと胸に沁みる感情は何だろう。
わたしは、この人が好きだった。
ただ、それだけだ。
それだけ……。
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