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唇を噛んで顔を上げると、神妙な面持ちのユウと目が合った。
「美咲」
その声に胸が苦しくなる。
わたしは、溜め息混じりに小さく息を吐いて、ユウを見詰めた。
こうやって間近でユウの顔を見るのは、久しぶりのことだった。
ちょっと雰囲気が変わったような気がする。
でもそれは、家庭を持ったのだから、当然のことなのだ。
ユウは現実を受け入れ、前へと進んでいる。
わたしだけが、動けずに立ち止まっているみたいだ。
「……じゃ、一分だけ」
そう答えたのは、少しでもいい。自分も前へと進みたいと思ったからだ。
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