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あまりにも大きな声だったので、三人だけでなく、お店の中にいる人全員が注目してくる。
だけど仕方ないよ。驚くなって言う方が無理。
だって、そんなことってある? そこに大好きな源之助先輩が立ってるんだよ。
「おい、季菜。どうしたんだよ?」
お父さんが咎めるように聞いてきた。
「先輩が……」
「え?」
「だって先輩がいる……」
「え?」
お父さんは理解できなかったようで眉を曲げる。
「ああ、季菜ちゃんは息子と同じ学校なのよね」
新しいお母さん候補の女性が微笑みながら言った。
「は、はい」
「ああ、母さんから聞いてたけど、ごめん。一年生に知ってる子ほとんどいなくてさぁ、会ったことあったっけ?」
うわぁあああああああああ。先輩に声をかけられちゃったよおおおおお。
興奮してまた叫びそうになるのを、グッとこらえる。
「いえ、あの、ないです……」
精一杯の台詞は、いつもの私からは考えられないほどの小さな声だった。
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