好きって言えない

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「そっか、じゃあ良かった。会ってるのに覚えてなかったら感じ悪いもんね」 先輩が微笑む。 でも、その顔を直視できなかった。だって、だって、先輩との距離1m以内。 過去最高接近なんだもん。 「おい季菜、ちゃんと挨拶をしないか」 お父さんに咎められる。 「あ、あ、あど……」 うぎゃぁあああ噛んじゃったよ! 「はっ、花木季菜です」 ほとんど聴き取れないであろう小さな声で、顔を真っ赤にしてうつむいたまま名乗った。 「へぇ、季菜ちゃんって言うんだ。どんな漢字で書くの?」 「か、か、漢字ですか? き、季節の季に、野菜のさいです」 「へぇ~季節の野菜で、季菜ちゃんなんだ」 うぎゃぁあああああああああ。先輩が私の名前を! 「は、は、はい。そうです」 「珍しいって言うか、でも可愛い名前だね」 セ・ン・パ・イ・に、褒められたぁあああああああ。 名前をつけてくれたお祖父ちゃん。有り難う。今度お墓参りに行きます。 私は五年前に亡くなった、父方の祖父に心の中で感謝した。
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