好きって言えない

16/58

20人が本棚に入れています
本棚に追加
/59ページ
「あの……」 先輩がお父さんに向かって、初めて自分から口を開く。 「何だい?」 「うちの母と結婚するんでしょうか?」 「ああ、そのつもりだけど、僕たちにはそれぞれに家族があることだから、君とうちの娘が反対をするのなら、諦めるつもりだ」 「そうですか……。季菜ちゃん。君はどうなの?」 いきなり先輩に振られた。 「えっ、あ、いや、あの……。私は賛成です。お母さんが死んじゃってから、お父さんはずっと一人で私を育ててくれて、それは本当に大変だったと思います。まだ若いんだし、まだまだ人生は長いですから、お父さんが思うようにすればいいと思うし、してほしいです。それに……私も今は家事に時間を取られてることが多いので、お母さんが出来て、家事を分担出来たらすごく時間的に楽になるんで……」 「そうか」 すごい私。噛まずにちゃんと言えた。初めて自分で自分を褒めてやりたいよ。って、どこかで聞いたような台詞だな。 そんなことを思った。
/59ページ

最初のコメントを投稿しよう!

20人が本棚に入れています
本棚に追加