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「季菜、また京正先輩の事見てるの?」
仲良しの蓮花が笑いながら聞いてくる。
「うん」
放課後のグランドでサッカーボールを追う先輩の事を、三階の廊下から見るのが、いつもの私の日課だった。
「好きだねぇ~。彼女がいる人を相手にさぁ」
「分かってるよ」
蓮花のいじわる。そんな分かり切ってること、いちいち言わなくても良いのに……。
「どうあがいたって、季菜じゃ悠木先輩には勝てっこないもんね」
「うるさい!」
だからそんなことは言われなくたって分かってる。
高校に入学して、一目惚れをした京正源之助先輩には、悠木沙耶っていう超美人な彼女がいるのだ。
どうやったって、ちんちくりんな私が勝てるわけがない。
だから私は見てるだけでいいの。みんながアイドルのコンサートに行くように、私は先輩をこの場所から見ていたいの。
それだけでいい……。それ以上を望むつもりなんかない。
だから蓮花にいじわるなことを言われると、本気で腹が立つのだ。
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