好きって言えない

30/58

20人が本棚に入れています
本棚に追加
/59ページ
「ここにいたんだ? いやぁー探したよ」 「え? そうだったんですか?」 「うん。季菜ちゃんの教室に行ったら、君のクラスの子に捕まって、質問責めにされちゃってさぁ」 「ごめんなさい」 「いや、いや、全然季菜ちゃんが謝ることじゃないよ。それより行こうか」 「はい」 先輩に促されて歩き始める。 すごいよ私。 ずっと遠くから見つめるだけだった先輩と、肩を並べて歩いてるなんて……。幸せだなぁ。このまま時間が止まらないかなぁ……。 そうすれば、兄妹は恋愛出来ないとか、先輩に彼女がいるとか、そんなこと気にせずに、ずっと先輩の顔を近距離で見つめ続けていられるのになぁ……。 先輩と並んで歩いていると、ああやっぱり先輩ってモテるんだって分かる。 だって通りすがりの女の子が、みんな横目で先輩を見るから。 そして露骨に、こんな女と付き合ってるの? もしかしてこのイケメンくんは、ブス専なの? それとも博愛主義者? そんな目で見てくる。 やっぱり先輩と付き合おうと思ったら、悠木先輩みたいな美人じゃなきゃ、周りが納得しないのだろう。 そしてまた、私の口からため息が漏れた。
/59ページ

最初のコメントを投稿しよう!

20人が本棚に入れています
本棚に追加