好きって言えない

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「はい。先輩、粗コーヒーですが」 出来たコーヒーを先輩に差し出す。 「ソコーヒー?」 「はい。粗末なお茶で粗茶っていうから、粗末なコーヒーで粗コーヒーです」 「ああ、そういうことか。季菜ちゃんって、笑いのセンスはイマイチだね」 「ぁ、すみません」 先輩はニコニコしながら、コーヒーカップに口をつけた。 「おっ、美味いよこのコーヒー」 先輩の嬉しそうな顔に、キュンキュンしちゃう。 「ところでさぁ、何も考えずにお邪魔しちゃったけど、お父さんって何時頃に帰ってくるの?」 「ああ、えっと六時半くらいだと思います」 「あっ、そうなの? だったら早く来過ぎちゃったな……部活してから来ればよかった」 ダメですよ。二人っきりの貴重な時間。なんならお父さんに、今日は夜中まで帰ってくるなって言いたいくらいなのに。 「まだ四時半だし……夕飯の用意はしないの?」 「そうですねぇ、一時間もあれば充分なんで、まだ大丈夫です」 「そっか、じゃあ一時間何して時間をつぶすかなぁ……」 先輩が困ったような顔をした。
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