好きって言えない

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「あっ!」 先輩が倒された。 誰よ! 先輩にファールしたの! アンタなんかイエローカード……。ううん。レッドカードよ! 「あっ、って、どうかしたの?」 蓮花が並んで校庭を見る。 「先輩が倒されちゃったんだよ」 「ふ~ん」 何よ。そのどうでもよさげな反応は。先輩がケガして歩けなくなっちゃったら、どうするつもりなのよ? 「じゃあ私、先に帰るね」 蓮花は手をあげた。 「うん。バイバイ」 私は蓮花の背中に向かって声をかけると、すぐに先輩を探す。 いた。 倒されたけど大事には至らなかったみたいで、また走り回っている。 私は心の底からホッとした。 そのまま飽きもせずに先輩の姿を見続けていたけど、そろそろ帰らなければならない時間になってしまった。 うちは母がいなくて、父と二人で暮らしているから、夕飯の支度をしなければならないのだ。 先輩、また明日。 心の中でそう呟くと、私は教室に戻り、カバンを持って帰宅することにした。
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