好きって言えない

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先輩が親切丁寧に教えてくれているのに、こんな状況だからまったく頭に入らなくて、きっとバカな子だって思われたに違いない。 三十分くらい数学を解説してもらったけど、結局ほとんど頭に入らなかった。 「俺って教えるの下手なのかな……」 先輩が悲しそうな顔をする。 ――きゅん。 初めて見る表情に胸がキュンとすると同時に、ものすごく申し訳なく思って落ち込んだ。 「一緒に暮らし始めたら、もうちょっと分かり易く教えるからさ」 「すみません……」 「季菜ちゃんが謝ることじゃないよ」 もう、どこまで優しいんですかアナタは……。こんな人好きになるなっていう方が無理だよ。 「他の教科にしようか? 日本史は大丈夫なの?」 「全然ダメです」 「そっか……」 そう言いながら先輩が日本史の教科書を開く。 「この辺りは中学レベルだから知ってるよね? 大化の改新とかさぁ」 「ああ、それは分かります。確かムシゴメ作ってですよね」 「うん。そうそう中大兄皇子とか、藤原鎌足とかさ」 「ああ、辛うじて分かります」 「持統天皇とか、天武天皇とか」 「えっと……それはちょっと……」 「え?」 そこでまた先輩が呆れたような顔をした。
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