好きって言えない

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そして引っ越しの当日。今日から私と先輩は家族になる。 引越し屋さんによって運び込まれる、たくさんの荷物を収納していく作業を、瑞希さんと先輩が手伝ってくれた。 それでも一日で片づけきるのはとても無理そうで、本当に連休で良かったと思う。 半分ほど片付いたところで、出前のお寿司が届いたので、作業を中断して夕飯タイムになった。 「今日から家族になるってことで、よろしくね季菜ちゃん」 瑞希さんが嬉しそうに言う。 「はい」 「じゃあ乾杯しましょう」 みんなグラスを手に持って合わせあった。 これからは先輩とずっと一緒にいられるんだ。いつもこんなに近くで先輩を見ていられる。 「おっ、美味い!」 先輩ったら子供みたい。もう可愛いんだから。初めて先輩の事を、素敵じゃなくて可愛いと思った。 「季菜ちゃん。しっかり食べてね」 「はい」 お父さんといつも二人だけの夕食だったから、賑やかで楽しい。 瑞希さんが気を使って話しかけ続けてくれるから本当に楽しくて、こんな日がこれから続いていくのだと思ったら、嬉しくて嬉しくて仕方なかった。
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