好きって言えない

47/58

20人が本棚に入れています
本棚に追加
/59ページ
そして一週間が過ぎた日曜日。 自分の部屋でスマホを弄っていたら、玄関が騒がしくなった。耳をすますとお兄ちゃんともう一人の声。 ドアがノックされた。 「はい」 返事をするとドアが開いて、お兄ちゃんが顔を出す。 「季菜、ゴメン。沼澤のヤツがどうしても季菜を見たいって言うもんだからさぁ、いい?」 「こんにちは~~~」 OKを出さないうちに、お兄ちゃんを突き飛ばして、沼澤先輩が入って来た。 「こんにちは」 「あ、こんにちは」 「うぉおおお~~~これが噂の季菜ちゃんか!」 噂って、どんな噂をされてるの? 「おお、カワイイじゃん」 カワイイとか言われると、照れちゃうよ。 「だろ?」 お兄ちゃんが得意げに答えた。 「俺、沼澤って言います。今度デートしましょう」 「テメェふざけんな! 殺すぞ!」 「おっ、何だよ。いくらアニキでも、妹の恋路を邪魔すんじゃねぇ」 「うるせぇ! オマエなんかに季菜を任せられるわけねぇだろボケ!」 「何だと! このシスコン野郎!」 「うるせぇよ」 おそらく冗談なのだろうけど、男の人に取り合いをされるなんて経験が一度もなかったから、二人のやり取りがすごく嬉しかった。
/59ページ

最初のコメントを投稿しよう!

20人が本棚に入れています
本棚に追加