20人が本棚に入れています
本棚に追加
/59ページ
そして一週間が過ぎた日曜日。
自分の部屋でスマホを弄っていたら、玄関が騒がしくなった。耳をすますとお兄ちゃんともう一人の声。
ドアがノックされた。
「はい」
返事をするとドアが開いて、お兄ちゃんが顔を出す。
「季菜、ゴメン。沼澤のヤツがどうしても季菜を見たいって言うもんだからさぁ、いい?」
「こんにちは~~~」
OKを出さないうちに、お兄ちゃんを突き飛ばして、沼澤先輩が入って来た。
「こんにちは」
「あ、こんにちは」
「うぉおおお~~~これが噂の季菜ちゃんか!」
噂って、どんな噂をされてるの?
「おお、カワイイじゃん」
カワイイとか言われると、照れちゃうよ。
「だろ?」
お兄ちゃんが得意げに答えた。
「俺、沼澤って言います。今度デートしましょう」
「テメェふざけんな! 殺すぞ!」
「おっ、何だよ。いくらアニキでも、妹の恋路を邪魔すんじゃねぇ」
「うるせぇ! オマエなんかに季菜を任せられるわけねぇだろボケ!」
「何だと! このシスコン野郎!」
「うるせぇよ」
おそらく冗談なのだろうけど、男の人に取り合いをされるなんて経験が一度もなかったから、二人のやり取りがすごく嬉しかった。
最初のコメントを投稿しよう!