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そう……。
お兄ちゃんは妹として、私のことを日々可愛がってくれていたのに、私ときたらいつの間にか、お兄ちゃんと一緒にいることが当たり前になり過ぎていた為に、まるでお兄ちゃんと付き合っているように錯覚していたのだ。
私の部屋で夏休みの宿題をしながら、その問題を教えてもらっているときに、お兄ちゃんのスマートホンが鳴った。
「おっ、沙耶からだ」
お兄ちゃんが目を輝かせる。
その瞬間、私の胸にズキッと痛みが走った。
「うん。ぁあ分かってるよ。明日はちゃんと開けてるから……うん。うん……。じゃあ10時で、うん。OK、じゃあな」
お兄ちゃんが電話を切って、私と目が合う。
「明日はちょっと出かけるからな」
嬉しそうにそう言うお兄ちゃん。
「デート?」
「ああ、まぁ、そういうことになるのかな?」
「ィャダ……」
「え?」
「あ、ううん。何でもない」
心の中では「イヤだ。行かないで」って叫んじゃったけど、もちろん口に出せる訳がない。
「あんまり金ないけど、何かお土産買って来てやるからな」
そう言って微笑むお兄ちゃん。
苦しくて、苦しくて、とても勉強が出来る精神状態じゃなくなってしまった。
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