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「ただいま」
夕方になってママが帰ってきた。いつもママは玄関のドアを開けると、中に向かって大きな声で「ただいま」と言う。
「お帰りなさい」
私は自分の部屋から、ママを迎えに出た。
「あら? どうかしたの?」
ママの顔が曇る。
「え?」
「何かあった?」
「な、何も……」
ヤバい。普通にしてるつもりだったのに……。
「そう?」
「うん」
笑顔が引きつっちゃう。
「なら良いけど」
ママは優しく微笑んでくれた。
相手がお兄ちゃんじゃなかったら、片想いが切ないってママに相談できるのに。
「ねぇ季菜」
「何?」
「ママ明日、仕事休みだから、二人で出かけない?」
「あっ、うん。いいけど、どこに?」
「そうねぇ、三笠町のショッピングモールとかどう?」
「うん。いいよ」
「じゃあ決まりね」
ママが嬉しそうに微笑む。
それが私にもすごく嬉しくて、やっぱり私はこの幸せを壊しちゃいけないって痛感した。
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