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「源之助!」
ママが大きな声でお兄ちゃんの名前を叫んだ。
「か、母さん」
お兄ちゃんは驚いて目を見開く。
当然悠木先輩もこっちを見たから、私は咄嗟にママの斜め後ろに隠れた。
ママったら、そっとしておけばいいのに……。
そう思ったのに、ママは二人の方に歩み寄っていく。
私はママの後ろに隠れるように、そっとついて行った。
「アナタが悠木さんね」
ママが威圧的に悠木先輩を見る。
「はい。初めまして悠木沙耶と申します」
先輩は笑顔で挨拶をした。
「いつも息子がお世話になっているようで、有難うね」
「いえ、とんでもありません。こちらの方こそいつもお世話になっております」
先輩ったら、何でそんなにちゃんと返せるんだろう。私だったら突然彼氏のお母さんに会ったら、こんなにちゃんとは挨拶なんか出来ないだろう。
そういう意味でも私って、悠木先輩の足元にも及んでいない。
お兄ちゃんの彼女として、全くケチのつけようもない人である。どう考えても私が勝てる要素なんてどこにもないと思った。
しばらく立ち話をすると、シビレを切らせたお兄ちゃんによって、半ば強制的に解散させられて、ママと二人で駐車場に向かう。
途中で売り場の通路を曲がるまで、私は何度も振り返って、お兄ちゃんと悠木先輩の姿を見た。
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