好きって言えない

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「可愛い子だったわね」 車に乗り込んで、ママが口を開く。 「うん」 母親にまで可愛いと言われたのだから、もはや公認カップルである。 「でも、季菜も負けてないくらい可愛いけどね」 ママがウインクした。 「ううん。私なんか全然……」 もうお世辞なんかいいよ……。 「そんなことないわよ。ママは季菜の方が可愛いと思ってるんだから」 「アリガト……」 とりあえずお礼を言っておかないと、場が収まりそうにない。 ママはエンジンをかけて、車を走らせた。 そこから会話が途切れてしまい、無言のままで時間が過ぎていく。 そのまま自宅に帰ると思っていたのに、ママは山の方に車を走らせた。 ここは大昔、お城があった場所で、駐車場は展望台になっている。 駐車場に車を止めると、ママが私を見つめてきた。 「ママ?」 「ねぇ季菜……。もしかしてだけど」 「何?」 「季菜は今、好きな人いる?」 「えっ?」 突然思いもよらない質問をされて、私はドキっとした。
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