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「別に……いないけど」
嘘をつくのが苦しい。
「そっか、やっぱりいるのね」
ママが悲しそうな顔で、視線を私から前の景色に戻した。
「やだな。いないよママ」
「分かるよ」
「え?」
「いつも季菜のこと見てるから」
ママに見つめられる。
私は胸が苦しくて、すぐに視線を逸らした。
「源之助なのね」
「違うよママ。違う」
あれ? 何で? 涙が出てきちゃった。
「やっぱり……」
ママがため息を吐く。
「違うってママ、本当に違うから」
どんなに否定をしても、これだけ涙が出ちゃったら、もうバレバレだよ。
それでも私は、ママやお父さんの幸せの為に、認めるわけにはいかないのだ。
「季菜……ごめんね」
何でママが謝るのか分からないけど、その言葉が益々私の涙腺のコックを開いてしまった。
「ぅぅうぅうう」
もう訳が分からないよ。悲しくて、悲しくて、涙がどんどん溢れちゃう。
「ごめんね季菜」
ママが私のことを抱きしめた。
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