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どう返事をしたものか分からず、黙った。
結局、切ないわねというありきたりな言葉しか言えなかった。
「うん。僕は父が大好きだったからね。でも母は父を嫌っていたみたいだ。少しも悲しそうじゃなかった。むしろ嬉しそうでさえあった」
「そういうことも、あるかもね」
「そうだね。でも当時子どもだった僕は、なんだかそんな母が許せなくってね、怒ったんだ。もっと悲しめよって」
「そう」
「そうしたら、逆に母から怒られた」
「怒られた?」
「うん。あんな出来損ない、死んでよかったんだ! 〝おまえも喜んでた〟じゃないか!……ってね」
「〝おまえも〟って、あなたも?」
「そうだろうね。僕と母のふたりしかいなくて、母が〝おまえ〟って言ったんだから、僕のことなんだろうね。でも僕はぜんぜん喜んでなんかいなかったから、その言葉の意味が分からなかった」
「そうよね。むしろ怒ってたんだし……。結局、どういう意味か分かったの?」
「今もわからない」
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