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くどくどと長い説教は数時間と続き、正座をしていた青年には既に脚の感覚が消失している。脚を伸ばしたら痺れる事は確定である。実務中は真面目である女性は悪戯好きであり、指先でつんつんと突っついて来るのも確定である。
もしやワザと長時間正座させられているのでは? と思わず勘繰るが、女性は真面目そのもの。繰り返し繰り返し同じ内容を違う言い回しで告げてくるのも説教の内容を印象付ける為だとも青年は理解している。
次、同じ間違いを犯そうものならチョークスリーパーを掛けられる。言い分を聞いてくれるには聞いてくれるのだが、それで自分に非がある場合、彼女は容赦なくジャーマンスープレックスを決めてくるのだ。
うんざりするほど長時間に及ぶ説教が終わり、痺れた脚を突っつかれ、漸くまともに動けるようになってから青年はある場所へと向かう。
青年がやらかした為に運命を狂わされ、死んでしまった命を転生させに行くのだ。話の流れ次第では、人の肉体を作るというちまちま作業が待っている。
黒髪の、整ってはいるが百人が百人普通という評価を与えるであろう容姿を持つ青年が目を覚ますと、開口一番にこう呟いた。
「知らない天井だ」
「真っ白な部屋に知るも知らないもないと思うんだけど?」
すぐ側に金髪の青年が立っている事に気付き、黒髪の青年は情けない声を上げながら尻餅をつく。ばくばくと脈打つ心臓を深呼吸して落ち着かせ、金髪の青年を見上げた。
黒髪の青年が居る部屋は、金髪の青年が言うように一面真っ白だ。真っ白過ぎて気が狂いそうだが、落書きをすると去勢される。金髪の青年が。
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