57人が本棚に入れています
本棚に追加
生まれる前から他人より優れている事が分かる時点で十分贅沢なのだ。世の中には豚に真珠や宝の持ち腐れという諺があるが気にするな。努力すれば他人より劣る事はない。
「え? 俺努力しないと駄目なの? それと持ち出した諺に悪意しか感じらんない」
「人生は随時ハードコアだ。豚にならないよう努力しろ」
「俺の精神に大ダメージ!!」
膝から崩れ落ちる黒髪の青年を尻目に、金髪の青年は仕上げの準備を始める。黒髪の青年が望む世界を選び抜き、要求に答えられる夫婦を探しだし、二人の間に生まれる子供に設定する。
金髪の青年の手が輝き、一枚の紙とペンが生み出される。その紙にはずらーっと細かい文字に埋め尽くされ、二ヶ所にサインする為のスペースが開けられている。一つには金髪の青年が、もう一つには黒髪の青年がサインした。
「初魔法がこんな、こんなっ!」
余りにも地味な魔法に黒髪の青年はうちひしがれた。期待度が大きかっただけに、失望の念が巨大過ぎて脚から力が抜け、ぐでぇー、と力なく転がる。が、すぐにがばっ、と起き上がった。
「そうだ! ギャルゲ主人公みたいなモテモテ――」
「サインしてからの変更は無理な」
「うあああああああ!! ああああああああああ!!!!」
最後の希望とばかりに腕を突き上げるが、金髪の青年は冷たく事実を述べた。黒髪の青年は絶叫しながら紙を奪おうと飛び付くが金髪の青年はひらひらと踊るように回避する。
「まぁ、まぁ、生まれ直してから上手く立ち回れな。考える力があるんだから子供時代に頑張ればそれなりに希望はあるだろうし、な?」
「な? じゃねえええええこのイケメソめえええええ!!」
「どうもありがとう。因みにこの顔は生まれつきだ」
「嫌味かキチショウ!」
最初のコメントを投稿しよう!