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同棲はしない、というのが、二人で決めたことだった。 そのことに、特に明確な理由があったわけではない。事務の私と違って、営業の拓馬は休日も接待などで忙しくしていたけれど、それでも頻繁にお互いの部屋を行き来していたし、淋しさを感じたことはなかった。 でも、こんなふうに気まずいまま別れてしまったあとで、私たちは、どんなふうに再会すればいいのだろう。拓馬は明日電話をかけてくるだろうか。それとも、私からの連絡を待っているのだろうか。 ーー恋愛ごっこじゃないんだから。 これから結婚するというのにそんなことを考えているなんて、おかしなことだというのはわかる。自分の婚約者に、どんな顔をして会えばいいのかわからないだなんて……。 息を深く吸い、ゆっくりと吐いた。それを三回繰り返してようやく、少し気持ちが落ち着いてきた。 台所に行き、グラスにウォッカを注いで、オレンジジュースで割って飲んだ。 オレンジジュースの甘さが引き立つ液体は、体内をゆっくりと徘徊しながら、徐々に熱を持ちはじめる。ウォッカを少し入れすぎたかもしれない。 落ち着くどころか、逆に感情が高ぶってきて、目に涙が滲んできた。 「何やってんの、私は……」 呆れてため息をつく。 酔いに抗うことを止め、まぶたを閉じた。 このまま眠りに落ちてしまえば、新しい朝がやってくるし、朝目覚めれば、今とは違う考え方をすることだってできる。 人生なんて、と思う頃には、身体の半分はもう、夢の中にいた。 ーー人生なんて、それの繰り返し。これまでだってそうだったし、これからもそうだ。一人が二人になったって、三人になったって、同じことだ。
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