3.

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酔いつぶれた香澄をタクシーで先に送ると、次は私のアパートに向かった。 再び街がすべり出す。あちこちに光るイルミネーションやツリーを通り過ぎ、人気のない住宅街を進んでゆく。静かで冷たい夜の景色の中に、私とフミくんのふたりだけが残されているような気がした。 「香澄の部屋に泊まっていけばよかったのに」 私は言った。 「そんなことできないよ。葵ちゃんを先に送り届けないと」 「相変わらず紳士だねえ、フミくんは」 「そんなことないよ」 ふいに、フミくんの声色が変わった気がしてどきりとしたが、 「俺、明日用事あるからさ。今のは、ちょっとカッコつけてみただけ」 あはは、と照れくさそうに笑うのを見て、私もほっとする。 今日だけで何度もフミくんが笑うのを聞いていたけれど、笑い方は本当に変わらないな、と改めて思った。 香澄の前で、彼はどんなふうに笑うのだろう。 ふたりのとき、香澄は彼に、甘えたりするのだろうか。 普通の恋人同士みたいなことを、したりするのだろうか……。 うまく想像できなかった。自分が拓馬とするようなことを、このふたりがしているなんて。
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