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三○二号室。拓馬の部屋だ。電気はついていない。
やっぱり飲み会だろうか。立っているのは辛いので、ドアの前に座り込む。
「ふう……」
白い息が漏れ、寒いな、と思う。
もう少し待ってみよう。すでに日付は変わっていた。
何も考えずにここまで来てしまったけれど、もし拓馬が帰ってこなかったら、どうすればいいんだろう……。
会いたい、と思った。今、ものすごく、拓馬に会いたい。
前に会ってから五日しか経っていないのに、随分長いあいだ会っていないような気がした。
その間、拓馬は何を考えていたのだろう。
私のように、ずっと先の、あるいは近い未来を想像して、不安になったりしたのだろうか。
それとも、忙しくてそんなこと考える暇もなかった?
私はーー、
じわりと涙が滲む。
私は、何てことを考えていたんだろう。
「……何してんの?」
エレベーターの方から声が聞こえたのは、そんな時だった。
「拓馬……」
顔を上げると、少し赤らんだ顔の拓馬が、ふらつきながら近づいてきた。
待ってたの、と答えようとして、やめた。本当に、何をしていたんだろう、私は。
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