3.

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「鍵あるんだから、中に入ってればよかったのに。風邪ひくだろ」 「うん……そうだよね」 ごめんね、そう思ったのと、拓馬の声が、重なった。 「ごめんな」 苦々しい顔で、拓馬は言う。 私はびっくりしてその顔を見つめた。 私の隣にすとんと腰を下ろして、彼は続ける。 「この前、言いそびれたから。話、ちゃんと聞いてなくてごめん。当たったりしてごめん。不安だったんだ。俺、色々ちゃんとやれるかなとか思って……情けないよな」 そう言う拓馬はなんだかいつもより素直で、目は赤く、少し潤んでいる。お酒には強いはずだから、結構飲んできたのかもしれない。 「ううん、私のほうこそ、嫌な言い方してごめんね」 拓馬のまだ熱を持った手を、思わずぎゅっと握りしめていた。 「つめた……」 彼は笑いながら、私の手を、もっと強い力で握り返してくれた。 ーーー大丈夫だよ。 ーーー心配しなくていいよ。 そんな声が聞こえた気がした。 優しい、拓馬の声。 拓馬と知り合った頃、こんなふうになるなんて、思いもしなかった。 ぶっきらぼうだけど、私が落ち込んでいるときは、真っ先に気づいて励ましてくれた。 そんな優しさが好きだった。 ずっと一緒にいたいと思った。 でもその一方で、変化が怖かった。 ふたりの関係や環境、色々なことが変わっていく中で、大切な何かを失ってしまう気がした。 だけどそれは、私だけじゃなかったんだ。拓馬だって、同じだったんだ。
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