24人が本棚に入れています
本棚に追加
私と拓馬が出会ったのは、入社してすぐの頃だ。研修で組んだチームが同じだったのがきっかけだった。
半年が経ち、違う部署に配属されてからも、変わらずに親友のような関係を続けてきた。
週末は朝まで飲み続けたこともあったし、殴り合い寸前の大喧嘩をしたこともある。
くだらないことでムキになり、ふと、なんで怒ってたんだっけ、と思った次の瞬間にはもう仲直りしているような、そんな関係。
拓馬と笑い合うのは楽しかった。仕事で泣きたくなるようなことがあっても、拓馬とバカみたいにはしゃいでいれば、いつの間にかとこかへ吹き飛んでしまっていた。
そういう関係が二年ほど続き、拓馬のことを異性として好きだと気づいたのは、行きつけの居酒屋で、拓馬に恋愛相談をされた日だった。
「葵と同じ部署の、宮村さんが好きなんだよね」
と言われたとき、誤魔化しきれないない痛みを感じた。
「宮村さんかー、あの子人気あるよね」
私は言ってから、しまった、と思った。こんなことを言えば、告白を促しているようなものだ。
ーーイヤだ。拓馬が他の人のモノになるなんて、絶対にイヤ。
気づくと、私の両目には熱い涙が溢れていた。酒癖の悪い泣き上戸のように(実際、かなり酔っていた)、場所もわきまえずにわんわん泣いた。
びっくりした。泣くほど拓馬を好きだったなんて。二年も友達をやってきて、今さら気づくなんて。
拓馬はもっとびっくりしたらしく、戸惑っていたけれど、優しく頭を撫でた。
「葵が嫌なら、やめるよ」
そう言って笑った拓馬の顔は真っ赤で、たぶん、私と同じくらい酔っぱらっていたと思う。
最初のコメントを投稿しよう!