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ウエディングドレスを着ている自分は、なんだか別の人みたいだ。 普段なら絶対につけないようなきらきらのネックレスをつけて、どこかのお姫様みたいなティアラを頭に乗せて。 するとなぜだか性格までお上品になってしまった気がしてくるから、不思議なものだ。 「おー、いいじゃん。似合ってるよ」 試着室のカーテンを開けるなり、先に着替えていた拓馬が言った。グレーの、縦に薄くストライプの入ったタキシードだ。 似合うな、と思った。短髪の黒髪で、背が高い拓馬は、フォーマルな格好がよく似合う。 「そうかな。ちょっとシンプルすぎない?」 「ウエディングドレスはシンプルなほうがいいんじゃないの?その後、派手なのに着替えるんだし」 『派手なの』というのは、私が気に入って候補に入れているカクテルドレスのことだろう。 確かに、派手には違いないけれど。 「派手なのってねぇ……」 言い方が気になってつっかかろうとしたが、寸前のところでぐっと堪える。 あぶない、あぶない。今ここがお店じゃなかったら、そしてドレスなんて着ていなかったら、きっと私は、何その言い方、とすかさず言い返していたことだろう。 半年後の式までに決めなければならないことが山のようにあるのに、のんきに喧嘩なんてしている場合じゃない。 実際、結婚が決まってからというもの、忙しすぎて、まともなデートなんてほとんどしていないのだ。 なのに面倒くさがってすぐに私に丸投げしてくる拓馬に苛立って、ちょっとしたことでケンカ口調になってしまう。 『結婚式の準備って楽しそう』といなんとなく思っていたけれど、どうやら甘かったみたいだ。 それでも頑張れるのは、好きって気持ちがあるからなんだろうけど……と横を向くと、拓馬と目が合った。 「なに?もしかして、見惚れてた?」 と笑って言うと、 「自惚れんな」 と、拓馬も笑った。 ……あと半年。 この笑顔さえあればきっと頑張れる、そう思っていた。
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