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「ケーキはどのような感じにしますか?」
担当のウエディングプランナーが、ケーキのサンプルをいくつか広げて尋ねた。
「どれにしよう……拓馬?」
「え?ああ、うん」
拓馬が適当な相槌を打つ。
「もー、ちゃんと考えてよ。決まらないでしょう」
「はいはい、考えます」
と言いながら、横から渋々サンプルを除き込む。
拓馬にしてみれば、ケーキの形がハートだろうが四角だろうがどちらでもいいことかもしれないけれど、まずその態度が気に入らなかった。
疲れているのはわかる。少々無理をして予定を空けてくれたのも知っている。だからって、あからさまに態度に出さなくたっていいのに……。
ドレスを決める時まではよかった。当日の雰囲気を想像できたし、いいね、楽しみだね、などと言いながら、はしゃいでいた。
もっと言えば、式場を選ぶときのテンションがピークだったように思う。厳かなチャペルを前に思わず息を飲み、華やかな披露宴会場に歓喜し、その勢いで契約書にサインしてしまったくらいだから。
結局、私がいくつかの候補の中からケーキのデザインを選び、拓馬が同意して、その日の打ち合わせは終わった。
きっと私が何を選んだってそれでいいと言うんだろうな、と思いながら、はあーっ、と大げさにため息をつく。
プランナーが苦笑いするのを見て、私は少し恥ずかしくなった。
一人で空回りする姿を、笑われているように見えたからだ。
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