センチメンタル

２.

「あのさ」

帰り道、どうしてもイライラが収まらない私は、不満をそのまま口にした。

「もうちょっと協力してくれたって、いいと思う」

「協力？何を？」

拓馬は顔をしかめた。本気で何のことかわからないと言いたげな表情が、私をさらに苛立たせる。

「ちょっとは話に参加してってこと。今日だって、この前だって、私が全部決めて、拓馬は何でもいいみたいな感じで、こんなのバカみたいじゃん」

「だって、俺は特にこだわりとかないから。ていうかさ、葵の好きなように選べばいいと思うんだよ。結婚式ってのは、花嫁が主役なんだから」

彼は悪びれるふうもなく、しれっと言ってのける。

何それ、と私は思った。花嫁が主役だなんて、いったいどこの誰が決めたというのだろう。

そんな神話みたいなきれいごとを、あたかも常識みたいに言わないでほしい。

他の誰が言っても、拓馬にだけは、言われたくなかった。ふたりで頑張ろう、いい式にしようって、そういう前向きな言葉が欲しかった。