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いつだって言いたいことの半分も言葉にできずに、体内でくすぶったまま、消化不良を起こしてしまう。
「私はふたりで決めたいの。せっかく休み合わせて来てるんだから、色々話し合って決めたいの」
「休みだからだろ。別に来月でもよかったのに、お前が今日がいいって言ったんだろ」
拓馬は機嫌が悪くなると、決まって、私のことを葵ではなく、お前、と言う。
「……そうだけど」
私は黙った。どちらも悪くない。間違ってない。でも、ちゃんと話し合って丸く収めようと思っていたのに、これじゃあ私が不利じゃないの。
ーー不利って。ふとそう思って、可笑しくなった。私はいったい、何と争っているんだろう。
帰りの車内は無言だった。ラジオのDJの軽快なトークも、乾いた空気の中ではどこか気まずそうに響いている。
夕飯を食べて帰るつもりだったけれど、車はどこにも寄り道することなく、私のアパートの前に着いた。まだ六時だ。
「じゃあ、おやすみ」
「うん、おやすみ」
私は言って、ドアを閉める。車が角を曲がり、視界から消えてからも、しばらくその先を眺めていた。
十二月の夜は、いつ雪が降り出してもおかしくないくらい、しんと冷えている。
星も見えない、グレーの空。重たそうな雲が空に延びているのを見ると、明日は雨か、雪になるかもしれない。
天気っていうのは見る人の心を反映しているのかもしれないと、時々思う。そういう時の空は、いつもよりずっと心に染みる。
わかってくれるのはこの空だけ……なんて嘘くさいセンチメンタルな気分になってしまうのである。
不毛だなぁ、と私は冬の曇り空を仰ぎながら、思った。
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