2.

5/6
前へ
/27ページ
次へ
いつだって言いたいことの半分も言葉にできずに、体内でくすぶったまま、消化不良を起こしてしまう。 「私はふたりで決めたいの。せっかく休み合わせて来てるんだから、色々話し合って決めたいの」 「休みだからだろ。別に来月でもよかったのに、お前が今日がいいって言ったんだろ」 拓馬は機嫌が悪くなると、決まって、私のことを葵ではなく、お前、と言う。 「……そうだけど」 私は黙った。どちらも悪くない。間違ってない。でも、ちゃんと話し合って丸く収めようと思っていたのに、これじゃあ私が不利じゃないの。 ーー不利って。ふとそう思って、可笑しくなった。私はいったい、何と争っているんだろう。 帰りの車内は無言だった。ラジオのDJの軽快なトークも、乾いた空気の中ではどこか気まずそうに響いている。 夕飯を食べて帰るつもりだったけれど、車はどこにも寄り道することなく、私のアパートの前に着いた。まだ六時だ。 「じゃあ、おやすみ」 「うん、おやすみ」 私は言って、ドアを閉める。車が角を曲がり、視界から消えてからも、しばらくその先を眺めていた。 十二月の夜は、いつ雪が降り出してもおかしくないくらい、しんと冷えている。 星も見えない、グレーの空。重たそうな雲が空に延びているのを見ると、明日は雨か、雪になるかもしれない。 天気っていうのは見る人の心を反映しているのかもしれないと、時々思う。そういう時の空は、いつもよりずっと心に染みる。 わかってくれるのはこの空だけ……なんて嘘くさいセンチメンタルな気分になってしまうのである。 不毛だなぁ、と私は冬の曇り空を仰ぎながら、思った。
/27ページ

最初のコメントを投稿しよう!

24人が本棚に入れています
本棚に追加