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生活道路とでも言うのだろうか。
細い路地。
車両一台しか通れないであろう道幅。
掠れた白線に仕切られる道端の歩道は狭く、灰白の電信柱が我が物顔で聳え立つ。
もうそこに、人の通れる隙間はない。
レインブーツで慎重に水溜まりを避けつつ歩く。
半休を貰っていて、良かったのか悪かったのか。
低気圧のせいか、軽い頭痛がしていた。
雨の日は、いつもこうだ。
しょぼくれた降り方。
電信柱よりも尚濃い灰色に染まる空。
建ち並ぶ民家ですら、薄暗い灰白の帳に包まれる。
狭い通りを、二つ挟む先に有る大通り。
そこをひっきりなしに通る車両の、飛沫を上げて走り去る音は眠気を誘う。
けたたましくも鳴り響くクラクション。
きっと横断歩道を早く渡り切らない人の列に、痺れを切らした運転手が鳴らしているのだろう。
大通りの喧騒を余所に、この細い路地には仄暗い静寂が佇む。
全てが雨の中、灰色に染まって存在している。
ぽっと目の眩む様な鮮やかな色が一つ。
電柱脇に咲き誇っていた。
真新しい黄色い傘がひしゃげるのも気にせず、子供が電信柱に押し付けているのだ。
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