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「あっ、幸枝ちゃん、美佳ちゃん、お久しぶり。ごめんね、挨拶が遅くなっちゃって」
「……別にいいよ」
微笑みながら近付いてくる真利子は輝いているように見え、引き攣った笑みで答えた幸枝は、どうしようもない敗北感を味わった。
そんな幸枝の様子に気付きもしない美佳は、真利子の腕を引っ張って、右横に座らせた。
「真利子、なんだかキレイになった?」
「そんなことないよ?」
そう、真利子が綺麗になったわけではない。
幸枝もそれは分かった。
派手な化粧をしているわけでもなく、服だってそれほど目立つものでも流行を取り入れているわけでもないのだが、確かに何かが幸枝の記憶の中の真利子と目の前の彼女は違うのだ。
中学時代、真利子は暗く、いつも下を向いていた。
そうだ――微笑んだことなんて一度もなかった。
しかし、それに美佳は気付いていないようだった。
「えぇ、うそぉ。絶対キレイになったって! ねぇ? 幸枝?」
「え、うん」
「十年も経てば、人は変わるものねぇ」
「そんなに変わったかな?」
はにかみながらも微笑む真利子に、中学の時の暗い面影はない。
中学時代も少し人気があって、今でも男に困らない美佳が横にいても、堂々と張り合えている。
いや、むしろ美佳の方が平凡に見えるくらいだ。
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