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甲高く、断続的に鳴り響く電子音が室内に木霊する。
薄暗い室内に、カーテンの隙間から射す木漏れ日が顔に当たり完全に朝を告げていた。
ベッドの上で幸せそうな寝顔を晒していた青年はけだるそうに、緩慢とした動きで枕元にある時計のアラームを切った。
未だ顔に当たる日光が眩しいのか寝返りを打ち、少しズレ落ちていた布団をかけ直す。
部屋には静寂が広がり、青年は満足気な顔でベッドの上で体を丸め朝の惰眠を貪り始めてしまう。
どの世界でもこれが休日なら誰も文句は言わないだろうが、本日は休み明けの月曜日。
そしてこの青年はまだ高校三年生なのである。
幾ばくかの時が過ぎ青年の眠りが深くなろうかという頃、静寂は破られた。
携帯電話の着信である。
低い重低音に時折なにかを引っ掻いたような甲高い音が混じったなにやら呪われそうな音楽が部屋に流れ始めた。
幸せそうにベッドの上で惰眠を貪っていた青年も流れ出るBGMの不快さに顔を歪め着信相手を確認することもなく無視することを決め込む。
だが、あまりにも長々と鳴りやまない不快な音楽に盛大に舌打ちをかまして枕元の時計と一緒に置いていた携帯電話を掴みとり着信相手も見ずに電話を取った。
「あ、もしもし桐也?起きてる?」
無駄に爽やかな男の声がスピーカーから漏れ出る。
そして電話に出たことを激しく後悔した。
女の子ならともかく何故野郎何かのモーニングコールなんぞうけなきゃならんのだと。
心地よい気分から一転し心に氷河期が到来した青年、桐也はここまま電話を切ることを決意し電話を耳から離しかけたその時
「まだ寝てるの?今八時十五分だよ?」
あれ、と桐也は思う。
朝のホームルール開始は八時三十分。
ここから学校まで、最低十分はかかる
確認の為に見た時計は今この電話で一分過ぎ去った事を知らせていた。
「もっと早く起こせバカっ!」
急いで電話を切り学校に行く支度を始める。電話を切る前にバカが「理不尽だ」とか言っていたがそんなことはどうでもいい。
学校指定の制服に着替え、前日に用意していたお弁当をカバンに忘れずに突っ込み家を出る。
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