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いや、ガキなのは事実だ。
でも、だからって、これから一緒に仕事をする相手に、あからさまに馬鹿にしたような目なんかするか?
ここにもいたよ、非常識な社会人が。
「北川は、大学が一緒だったんだ」
補足的に、成瀬さんが情報を提供してくれる。
大学って事は、月山薫や三國さんとも一緒だったのか。
……多分、月山薫とは、相入れなさそうなタイプだな。
「取り敢えず、一度合わせてみようと思うんだが?」
「俺は、いつでもいいぜ」
成瀬さんの提案に、そう答えた北川さんは、二台あるピアノのうちの一つの椅子に腰を掛けた。
「いいかな?」
成瀬さんに聞かれて、頷く。
「はい。一度聴いてみたいです」
俺の返事を聞くと、成瀬さんは空いている方の椅子に座った。
「それじゃ、ドビュッシーの『白と黒で』を」
成瀬さんが曲を決めて、二人して準備を始める。
邪魔にならないよう、壁際に置いてある椅子まで移動して、そこに座る。
ピンと張り詰めたような空気に変わる。
成瀬さんが大きく息を吸い、向かい合う北川さんに合図を送り、息を吐くと共に、二人の両手が鍵盤に下ろされた。
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