前途多難な初仕事

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*前途多難な初仕事・3* 帰り道。 これからの事を思うと目眩がした。 北川さん。 もう、彼に至っては、練習と努力で技術面を向上してもらうより他ない。 そこまでは、いい。 別に悪い事じゃないし、本番までに間に合わせればいいだけだ。 問題なのは……あの性格だ。 明らかに、成瀬さんと弾くには技術不足で、演奏の足を引っ張ってるのにも関わらず、少しも悪びれた様子もなく、寧ろ、俺の指摘に対して、「はぁ?」っと逆ギレされた…。 謙虚さとか、学ぼうという姿勢が少しもない。 確かに、名前も知らない、しかも年下のガキに、あれこれと口を出されるのは、彼のプライドからして許せないのかもしれない。 それでも、これが俺の仕事なんだから、言うべき事は言うし、指摘しないといけない事は、どんなに言いにくい事だったとしても指摘させてもらう。 それを、どうクリアしていくかが、彼の仕事だと思う。 今のところ、俺の意見に耳を傾ける気は、全くなさそうだけど…。 そして、成瀬さん。 技術的には、流石は世界的ピアニストなだけあって、全く問題ない。 素晴らしいとしか言いようがないし、天才ピアニストだと、今日の演奏を聴いて、改めて思った。
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