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それでも、問題はある。
その事を指摘すると、成瀬さんは目を丸くして驚いていた。
気付かなかった、とか、そういう事じゃない。
まさか、『その事』を指摘されるとは思っていなかったからだ。
北川さんとは違った意味で、『それのどこが悪い?』という顔をされた。
余程、納得出来なかったんだろう。
解散した後、帰ろうとしていた所を成瀬さんに捕まった。
「どういう事なのか、詳しく説明してもらいたい」
そう言って、成瀬さんは、スタジオから少し離れた場所にあるオープンカフェに俺を連れて来た。
適当に座り、珈琲を飲みながら向かい合う。
一息ついて落ち着いた様子の鳴瀬さんが、真っ直ぐに俺を見た。
「君は、初めて会った時に言っていただろう?『俺の音が大嫌い』だと」
……………あー……そんな事、言いマシタね、俺。
俺って、本当に後先考えないで口走る癖、本当に直した方がいいな…。
いま思えば、かなりな怖いもの知らずだ。
「その言葉が、ずっと引っ掛かっていたんだ。もしかして、今日言っていた事と関連しているのか?」
成瀬さんの表情や口調に、俺を責めるような感じは全然なくて、純粋に知りたいと思っているように見える。
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