前途多難な初仕事

16/22
前へ
/550ページ
次へ
興味津々で聞いてくる三國さんに、ゲンナリする。 この人に話すんじゃなかったな……。 「ねーねー、奏ちゃん、後生だからさー、教え…」 「何くだらねえ話、してやがる」 突然、背後から聞こえてきた超不機嫌な声に、三國さんが固まった。 三國さんと二人して振り向くと、いつの間にか背後に立っていた月山薫が、ドス黒いオーラを身に纏いながら三國さんを睨み下ろしていた。 「えー…?人生相談……?」 冷や汗を流しながら答える三國さんを、月山薫は鼻で笑い、無理やり三國さんから席を奪い取って、俺の隣に座る。 「お疲れ」 「あぁ」 いつものやり取りの後、お決まりのように、カウンターの中にいる村沢さんに、「バーボン」と、声を掛けた。 「だって、気にならない?あの成瀬と、奏ちゃんが一緒に仕事してるんだよ?しかも…」 自分で言いながら、三國さんは思い出したように吹き出した。 「あの冷徹陰険男の成瀬が……!よりにも寄って連奏って…!」 再び、お腹を抱えて笑い出した三國さんを、月山薫は冷たい目で流し見る。 「……うぜぇ」 そんな冷たい月山薫の肩に、三國さんは、ニヤニヤした表情で手を乗せて距離を縮める。
/550ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3859人が本棚に入れています
本棚に追加