前途多難な初仕事

17/22
前へ
/550ページ
次へ
「またまたぁー。そんなこと言ってさー、本当は気になっちゃってんじゃないの?だって……」 そう言うなり、三國さんが、月山薫に何かを耳打ちする。 何を話しているのかは分からないけど、月山薫の変わっていく表情で、三國さんが、また余計な事を言ったんだろうという事が理解出来た。 「……三國、死ぬか?いっそ死ぬか?今ここで」 深みのあるドスの効いたデスボイスに、周りの空気が凍りつく。 「えー…?まだ死にたくないなぁ……」 月山薫の怒りに触れて、三國さんが見る見るうちに青ざめていく。 本当に、懲りるっていう言葉を知らないんだろうか、この人……。 いや、もうこれは、二人の間では挨拶替わりなのかもしれない。 うん、そうだ。 きっと、そういう事に違いない。 もう、そういう事にしておこう。 そう納得しながら、聞こえてきた、「奏ちゃん、助けて!」の声を、触らぬ神に祟りなし、とばかりに無視した。
/550ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3859人が本棚に入れています
本棚に追加