前途多難な初仕事

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突然、思い付いたアイデアに、目の前が明るくなる。 これなら、上手くいくかもしれない。 いや、上手くいってもらわないと困る。 やや興奮気味に、残っていたジンジャエールを一気に飲み干した。 「はあ!?」 「……だから、いま作ってる曲とは別に、成瀬さんに曲を書きたいんだけど…」 帰り道。 駅まで送ってくれるという月山薫に、先ほど思い付いたアイデアを話していた。 案の定、月山薫の表情が険しくなっていく。 「~~~~~っ!!!」 怒鳴りたい気持ちを無理やり抑え込んでいるのか、ギリギリと歯を食いしばっている。 成瀬さんの曲を作るとなると、本番までの期間が短いから、どうしても月山薫の曲が後回しになってしまう。 その了承も得たくて、申し訳ない気持ちで月山薫に頭を下げた。 「その、今のままだと、ちょっと……かなり大変な状況でさ。それを改善させる為に、新しい曲が必要なんだ。だから……本当、ごめん」 俺の説明に、苛立たしそうに髪を掻いた月山薫は、怒りを吐き出すようにして、大きな息を吐いた。 「……いつまでだ?」 「え?」 「成瀬との仕事、いつまでなんだよ」 「えっと、本番の演奏会が三ヶ月後だから、それまでかな」
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