無自覚な罪作り

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………やっぱり、余計なお世話…だよな……。 もしかしたら、成瀬さんの気を悪くしてしまったかもしれない。 「……いえ、あの、やっぱり余計なお世話ですよね。すみません、聞かなかった事にして下さい。新しい曲なんて、必要ないですよね。俺、無神経な事して…その、すみません」 慌てて頭を下げると、そこで、固まって動かなかった成瀬さんがハッとして、我に返ったように動き出した。 「いや、そうじゃない!そうじゃなくて……君はいいのか?期間も短いし、大学もあるのに」 「大学の方は、なんとか。期間は短いですけど……俺、絶対に良い曲作ります」 相手に不安を抱かせないよう、言い切る。 絶対に仕上げる! そんな意気込みを、目と声で成瀬さんに伝える。 「成瀬さんの思いが、お母さんに届くような、そんな曲に仕上げます。大切な演奏会……成瀬さんの夢、絶対、成功させます。俺、一生懸命に頑張ります」 全てを、この演奏会の為に注いできた成瀬さんの思い…そして、産みの母親に会うという夢を、良いものにしたい。 そんな大切な演奏会の監修を、俺なんかが務めていいのか、まだ戸惑いはあるけど、任されたからには、絶対に良い演奏会にしたい。
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